公益財団法人和歌山市文化スポーツ振興財団 埋蔵文化財センター

公益財団法人和歌山市文化スポーツ振興財団 埋蔵文化財センター 「未来は生きるための希望、過去は未来を生きる道しるべ」

30/04/2026

埋蔵文化財センターの仕事《遺跡の発掘調査シリーズ㉝》

新年度も早ひと月が経ちました。
埋蔵文化財センターもお蔭様で新年度のスタートをきることができました。

発掘調査作業のなかで、調査技師の最も重要な仕事は過去の人間生活の痕跡を見つけることです。今日は、遺跡である過去の生活痕跡を見つけるコツのお話です。

遺跡を見つけるコツ
➀自然の営力によって堆積した地層と人の営力によって堆積した地層の判別。
②過去の人間生活の痕跡(遺構)が見つかる地層上面の把握。
③遺構埋土の特徴を確認。
④遺構の重複関係(上下関係)の把握。
調査技師は、この4つのことを確認しながら遺跡を見つけています。

遺構を見つける作業は、地層の上面を片手両刃草削りという園芸用品で丁寧に削り、地層の色や質を確認しながら進めます。
そして遺構が見つかったら、その大きさや形を記録するため輪郭を示していきます。
調査技師にとっては遺跡と勝負する緊張の時間です。
動画はその作業風景です。

ひとことに地層の上面を削ると言っても、熟練した作業員さんと初めて調査に参加した作業員さんとでは仕上がりが全く違います。

調査技師が遺跡を見つける技術と知識、それに地層の色と質の違いを際立たせる作業員さんの掘削技術が遺跡調査の精度を大きく左右します。

埋蔵文化財センターの仕事≪遺物の整理作業シリーズ㉕≫年度末から新年度へと、春の嵐とともに過ぎていく毎日です。埋蔵文化財センターも、何とか皆様のご協力に支えられながら今年度業務を完了し新年度を迎えられそうです。昨年度、埋蔵文化財センターでは3...
01/04/2026

埋蔵文化財センターの仕事≪遺物の整理作業シリーズ㉕≫

年度末から新年度へと、春の嵐とともに過ぎていく毎日です。
埋蔵文化財センターも、何とか皆様のご協力に支えられながら今年度業務を完了し新年度を迎えられそうです。

昨年度、埋蔵文化財センターでは3冊の報告書と1冊の年報を刊行しました。
発掘調査報告書は、遺跡調査の記録であり地域の歴史を広く公開するためのものです。
そのなかで調査担当者は、自ら調査した生活痕跡や出土した生活用具の事実に基づいた観察所見のほか、遺跡形成の時期などについて図面や写真そして文章で説明しています。

和歌山市内の図書館には、県内の自治体や調査組織が刊行した発掘調査報告書が収蔵されています。
是非一度手に取って見てください。

実は、報告書を作成する私たちが言ってはいけないかもしれませんが、報告書には見聞きしたことがないような専門用語がならび、見方が分からないほど難解な図面がいっぱいです。
読み慣れていないと、決して読みものとして楽しいと思える書籍ではありません。

ただ、これには理由があります。
正確な遺跡の記録である発掘調査報告書は、日本全国で一定水準を保持し汎用性のある情報を記載するため、統一された約束事をもとに作成されています。
この約束事を守るために、発掘調査報告書は大変難しい読みものとなっています。

ですから、発掘調査担当者の仕事として、地域の歴史である遺跡の魅力を皆さんに知っていただくためは、報告書を執筆するだけでは十分とは言えません。
身近な歴史を発見していただけるもっと平易な、もっと楽しい、もっと魅力的な媒体を見つける努力が必要と思う今日この頃です。

21/03/2026

埋蔵文化財センターの仕事《遺跡の発掘調査シリーズ㉜》

薄ピンクの季節となりましたね。
和歌山城も桜まつりが始まりました。

発掘調査現場は野外の仕事です。この時期は、寒くもなく、暑くもなく作業に適した気候となり「ありがたやぁ~ありがたや」とつい声に出してしまいます。

世間は薄ピンクでも、発掘調査現場は茶色の世界。遺跡と向き合う毎日です。

地層に掘り込まれたことで現在まで遺存した先人の生活痕跡(遺構)を調査する(掘る)方法には、いくつかの手法があります。
発掘調査の目的は、遺構の正確な情報を記録することです。
発掘調査現場で得ることができる遺構の情報には、検出された位置(平面と標高)、遺存する形や大きさ、深さのほか、構築の方法、使われなくなった後に埋没していく過程などがあります。

集落遺跡の調査では、竪穴建物や掘立柱建物、柱穴、井戸、溝、土坑、ピット、墓、水田などの遺構が見つかります。それぞれの遺構とその遺存状態に応じて、正確な記録を作成するためにどうやって掘り進めたら良いかを発掘調査技師は判断しなければなりません。

たとえば、同じ地層の上面において古墳時代から鎌倉時代の遺構が見つかる集落遺跡では、木製の井戸枠をもつ古墳時代の井戸が埋没した後、ほぼ同じ場所に重なって石積みの井戸枠をもつ鎌倉時代の井戸が掘られていることがあります。
この場合、それぞれの井戸の構築時期や構築方法などの情報を正確に記録するには、どんな図面を作成し、その証拠となる写真を撮影しなければならないか、またそのためにはどの部分から掘削し、どの部分を掘り残さなければならないかを判断しなければなりません。
ただ見つかった生活痕跡をやみくもに掘り上げ、出土遺物を採取するだけでは調査とは言えません。

この調査方法を適時・適正に判断するため、発掘調査技師はたくさんの調査経験を積む必要があります。あらゆる事態に対する経験を積めば積むほど、発掘調査の精度は高まり、効率も上がります。日々研鑽です!。

07/03/2026

埋蔵文化財センターの仕事《遺跡の発掘調査シリーズ㉛》

3月に入りました。
いつもは年度末に向かって今年度事業の清算と完了報告書の作成に慌ただしい頃ですが、今週はじめから現場作業が始まっています。年度をまたいでの長期の現場作業となります。

遺跡調査の¨きほん¨の『き』は、まず遺跡を見つけることです。
遺跡とは、過去の人間生活の痕跡です。現在も地表面に露出しているものもあれば、地中に埋もれてしまったもの、また水中に沈んでしまったものもあります。
これらの遺跡のうち埋蔵文化財センターでは、おもに地中に埋もれてしまったものを考古学の手法で調査しています。

では、遺跡を見つけるとは?
地中に埋もれてしまった遺跡を見つけるには、調査地周辺の地層を観察します。地層を観察することで、過去の人間生活の痕跡がどの地層の上面で見つかるのかを知ることができます。
遺跡が見つかる地層の上面が確認できたら、次にその上部に堆積した地層を建設機械で除去します。

動画は、遺跡が見つかる地層上面で生活痕跡が見つかった様子です。
自然に堆積した黄色の地層に、白線で囲んだ大小の◯や□など、やや黒ずんだ土が見えますか?
この少し黒ずんだ土は、先人が地面に掘り込んだ生活痕跡に溜まった土です。遺構と呼びます。たくさんありますね。

これらから遺構を掘り進めていきますが、いつの時代の土器や石器が出土するのか、どんな目的で地面に穴が掘られたのか、ひとつずつ写真や図面で記録を残しながら調査をしていきます。
乞うご期待です!

和歌山の文化財情報シリーズ㊹春めいてきましたね。暖かい日が続いています。和歌山城では紅白の梅花が開き始めました。季節の移ろいを感じますね。今回の投稿は、和歌山県内の文化財情報です。「有田みかん」の生産地として全国に名高い有田市の郷土資料館で...
16/02/2026

和歌山の文化財情報シリーズ㊹

春めいてきましたね。暖かい日が続いています。
和歌山城では紅白の梅花が開き始めました。季節の移ろいを感じますね。

今回の投稿は、和歌山県内の文化財情報です。
「有田みかん」の生産地として全国に名高い有田市の郷土資料館では、3月に歴史講座「古墳時代の埴輪と土器」と題して講座が開催されます。
第1回は、3月7日(土)13時30分から「紀伊のハニワ‐有田地域を中心に‐」、第2回は、3月14日(土)13時30分から「伝統的な土器・搬入された土器」として、南北に長い紀伊半島の中部に位置する有田川流域の古墳時代を、埴輪や土器の特徴をもとに解説する講座です。

また、紀の川の上流で奈良県との境に近く、大きくて甘味が濃厚な「富有柿」の生産地であるかつらぎ町では、昨年11月11日(火)に信仰の織りなす文化拠点として「かつらぎ町歴史民俗資料館」が開館しました。
かつらぎ町は、古墳時代にヤマト王権と韓半島との交流を支えた紀の川、古代の官道である南海道を通して人や文物が行き交い、万葉歌人にも詠まれた畿内の南限として歴史が営まれてきた地域です。
特に、縄文時代後期の直径15~18m、高さ12mを測る西日本最大の大型竪穴建物が見つかった中飯降遺跡をはじめ、飛鳥時代後期の法起寺式伽藍配置である佐野廃寺、世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」を構成する水銀朱(辰砂)の神を祀る丹生都比売神社、高野参詣道(町石道)などが知られています。

この春先、暖かさに誘われて歴史散策にお出かけしてはいかがでしょうか。

埋蔵文化財センターの仕事《遺跡の発掘調査シリーズ㉚》三寒四温のはしりか、急に暖かくなったかと思えばまた寒く冷え込む和歌山です。大雪となっている地域の皆さま、大変な日々を過ごされていることと思います。春の訪れが待ち遠しい今日この頃です。日本政...
08/02/2026

埋蔵文化財センターの仕事《遺跡の発掘調査シリーズ㉚》

三寒四温のはしりか、急に暖かくなったかと思えばまた寒く冷え込む和歌山です。
大雪となっている地域の皆さま、大変な日々を過ごされていることと思います。
春の訪れが待ち遠しい今日この頃です。

日本政府地震調査研究推進本部内の地震調査委員会は、プレート境界の南海トラフを発生源とする震度6強以上の海溝型地震(東海地震、東南海・南海地震)について、令和7年9月26日に地震発生確率の計算方法の見直しを行いました。
その結果、今後30年以内に地震が発生する確率は、発生間隔と隆起量データからでは60~90%、発生間隔のみを用いた計算方法では20~50%としています。この数字は、南海トラフ地震への準備が切迫していることを示しています。
埋蔵文化財センターでも、出土品を収蔵する施設や収納棚の耐震強化を進めています。

実は発掘調査現場でも、地層(堆積物)として過去の災害痕跡が見つかります。洪水による氾濫堆積物のほか、地震による断層や地割れ、液状化、津波による津波堆積物などです。
和歌山平野でも、沖積低地の後背湿地などで地層の液状化による噴砂の砂脈などがよく見つかります。
噴砂は、概ね震度5以上の長い揺れが起こった場合、地下水の帯水層である砂礫層から地割れに沿って泥水とともに砂が噴き出す現象です。

この噴砂が、地層や遺構、遺物との関わりなど、考古学の手法や情報をもとにいつ発生したかを明らかにすることができれば、記録に残されていない巨大地震の発生時期や周期を知ることができます。また地層のずれや地割れ、津波堆積物などの時期、さらにそれらが確認できる範囲を総合的に分析すれば、災害の規模や復興までの期間、地盤の隆起や沈降など地形変化とその後の環境変化などを知ることができます。

地下に残された災害の痕跡や地層から、将来起こりうる災害を予測するための基礎となる情報を記録し公表することも、大規模災害の発生が予測され、その備えが進む地域で遺跡発掘に携わる調査技師の仕事です。

埋蔵文化財センターの仕事≪遺物の整理作業シリーズ㉔≫この冬で最も強い寒気がやってきましたね。南国和歌山も昨日から気温が上がらず冷たい毎日となっています。遺跡の発掘調査の仕事は、野外での発掘作業と屋内での出土遺物の整理作業のあと、調査記録の公...
22/01/2026

埋蔵文化財センターの仕事≪遺物の整理作業シリーズ㉔≫

この冬で最も強い寒気がやってきましたね。
南国和歌山も昨日から気温が上がらず冷たい毎日となっています。

遺跡の発掘調査の仕事は、野外での発掘作業と屋内での出土遺物の整理作業のあと、調査記録の公開を目的として発掘調査報告書を刊行して一段落となります。
そして報告書の刊行後は、埋蔵文化財の普及啓発に寄与するため、調査記録や出土遺物の保管と活用を目的とした収蔵環境を維持しています。

埋蔵文化財センターの発掘調査担当者は、毎年、年度末が近づくこの時期に報告書を作成しています。報告書は、調査記録の総まとめ、対象となる遺跡や調査内容を普及啓発するための基礎となる資料です。

今回の動画と写真は、報告書に掲載する出土遺物の写真を撮影しているところです。
埋蔵文化財センターには写真撮影用の特別な作業場はありません。また撮影台や背景紙のセッティング、デジタルカメラなども充分な機材が揃っているわけではなく、遺物整理室の机や椅子などを代用しながら撮影しています。

また撮影者である発掘調査担当者も、写真撮影の専門家ではく、職場の先輩や専門家から研修を受け見様見真似で撮影しています。それでも、出土遺物の質感や製作手法、使用痕跡や年代の指標など、情報量の多い記録写真が撮影できるよう意識して環境を整えながら作業しています。

土器や石器のイチオシ!の表情が皆さんに伝わるよう、こだわりの1枚を撮影するため奮闘しています。

和歌山の文化財情報シリーズ㊸皆様、新年明けましておめでとうございます。9日間という長いお正月休みが明け、埋蔵文化財センターも今週月曜日の仕事初めから業務を開始しています。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。新年早々の投稿は、和歌山市立博...
08/01/2026

和歌山の文化財情報シリーズ㊸

皆様、新年明けましておめでとうございます。
9日間という長いお正月休みが明け、埋蔵文化財センターも今週月曜日の仕事初めから業務を開始しています。
本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

新年早々の投稿は、和歌山市立博物館にて昨日7日(水)から始まった『和歌山市立博物館企画展 歴史を語る道具たち』のご案内です。

和歌山市内の遺跡の発掘調査を業務とする埋蔵文化財センターは、約3万年前の旧石器から明治時代の生活道具を調査して、その記録の作成、また永く後世に保存することを仕事としています。

今回の市立博物館の展示は、遺跡から出土する道具のように古い時代のものではなく、皆さんがお使いになられていた懐かしい道具を集めた展示です。
例えば電話。子供の頃はダイヤル式の黒電話でしたが今やスマホ。その変化の度合いといったら、、、。

道具には、道具そのものを製作する技術やその形態、目的達成のための使用方法など、同じ目的で製作された道具でも時代とともに変化していきます。特に、ここ50年間の変化は著しいものがありますね。

実は、この変化の度合いやスピードの違いをもとに、長期にわたる人々の生活様式や思想の歴史を復元するのが考古学研究の目的のひとつです。

会期は3月8日(日)まで。是非ご家族でご来場いただき、懐かしさと驚きをお楽しみください。

埋蔵文化財センターの仕事《発掘調査情報の公開シリーズ㉞》今年のクリスマスは雨。残念ながら、雪にはなりそうにありません。令和7年も、このページをあたたかく見守ってくださり誠にありがとうございました。おかげさまで、少しずつですが遺跡調査に興味を...
25/12/2025

埋蔵文化財センターの仕事《発掘調査情報の公開シリーズ㉞》

今年のクリスマスは雨。残念ながら、雪にはなりそうにありません。令和7年も、このページをあたたかく見守ってくださり誠にありがとうございました。
おかげさまで、少しずつですが遺跡調査に興味を持っていただける方が増えてきているように思います。
来年も情報発信していきますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

さて、今年最後の投稿は、和歌山市役所1階の市民ギャラリーで開催中の展示についてです。
今月16日から令和8年1月15日まで、「東城跡でみつかった弥生~古墳時代・中世の集落 ~東城跡第2次発掘調査~」と題し、調査報告展を開催しています。

「東城」は、紀の川北岸の沖積低地にあり、平安時代後期から鎌倉時代にかけて荘司であった中村氏の居館跡です。近年、和歌山県文化財センターの調査で平安時代末から鎌倉時代前期の屋敷を囲む堀とみられる大規模な溝が見つかっています。
また「東城」周辺には、「西城」と呼ばれる南北朝時代の紀伊国守護、山名義理の居館跡もあり、現在も南北186m、東西165mの方形区画が田園のなかに残っています。
これらの古代から中世の居館跡は、和泉から雄ノ峠を越え紀伊に至る熊野古道を境にして東西に位置しています。古代以降の街道を領域内に取り込み、都の人や物と繋がりを持ち情報を得ていた在地領主の姿が蘇ります。

そのほか、古代以前の遺構では、古墳時代初頭から前期の自然流路や沖積リッジを利用し営まれた集落が見つかりました。調査の結果、竪穴建物や井戸、灌漑用水路など自然地形の起伏を利用した集落の姿が明らかとなりました。

今回のギャラリー展は来月15日まで開催しています。いつもより少し長めに期間をいただいておりますので、お近くにお越しの際は是非お立ち寄りください。

来る年が、皆様にとって幸多き年となりますようお祈り申し上げます。
良いお年をお迎えください。

22/12/2025

埋蔵文化財センターの仕事≪遺物の整理作業シリーズ㉓≫

早くも年の瀬、年末となりました。
今年の仕事納めは26日。お正月休みは例年よりも長い9日間です。

この一週間は、新年からの作業を円滑に進めるため、発掘調査現場をはじめ出土遺物等整理作業では、安全対策の養生をしたり、劣化しやすいものは処理をしたりと年越しの準備に入ります。

埋蔵文化財センターでは、遺跡から出土した木製品や金属器は、微生物の繁殖や乾燥、また外気(酸素)に触れる環境をできるだけ減らす目的でシーラーパックするようにしています。
動画は、木製品をシーラーパックしているところです。こうすることで、木製品の乾燥を防ぐために充填する水の水質を長期にわたり維持することができます。

このシーラーの機械、かなりの年代物で、色々なところが言うことを聞かなくなってきました。でも、遺物整理の作業員さんのメンテナンスもありまだ現役です。

近年は、少子高齢化による人手不足や人材育成の問題が顕在化しています。
文化財の保存管理・収蔵についても、遺物を傷めることなく、長期にわたり効率良く維持管理できる方法を考え採用しています。

文化財を永く後世に守り伝えることも埋蔵文化財センターの重要な仕事です。

埋蔵文化財センターの仕事≪調査技術シリーズ⑧≫写真は、沖積低地の発掘調査現場で確認した調査区壁面の地層断面です。現地表面から移植ごて(手スコ)の先端まで、深さ1mほどの堆積物を確認しました。この地層断面で注目するところは、手スコの柄部分にみ...
21/11/2025

埋蔵文化財センターの仕事≪調査技術シリーズ⑧≫

写真は、沖積低地の発掘調査現場で確認した調査区壁面の地層断面です。
現地表面から移植ごて(手スコ)の先端まで、深さ1mほどの堆積物を確認しました。
この地層断面で注目するところは、手スコの柄部分にみられる黒色土とその上部にみられる厚さ3~4㎝ほどの浅黄色土です。

まず黒色土の土質は、その下部にみられる灰色~浅黄色の土質と同じで、極細粒砂~細粒砂が混じるシルトです。黒色と浅黄色の境界は、グラデーションとなっていて明確な境界線を引くことができません。つまり、浅黄色のシルト層の上部がしだいに黒色に変化したと言える堆積物です。このような黒色土を古土壌と呼びます。
古土壌は、草本の生育と、菌類などの微生物や土壌動物の活動によって、有機化合物(炭素化合物)が土中に蓄積されることで生成されます。よって、地層断面で古土壌がみつかった場合は、その堆積物の上面は当時の地表面が遺存していると言えます。
この古土壌が生成された堆積物の堆積環境は、土質から判断して河川近くに形成された自然堤防背後の湖沼と考えられます。

次に古土壌の上部にみられる厚さ3~4㎝ほどの浅黄色土ですが、よく見ると炭化物や暗灰色の細粒砂混じるシルト、浅黄色シルトの薄層の互層となっています。このような堆積物は、人の仕業ではなく、自然の営力で堆積した堆積物で、洪水による氾濫堆積物と考えます。

さらに、氾濫堆積物の上部には、そのブロック(浅黄色シルトの塊)をまばらに含む厚さ8㎝前後の灰色~暗灰黄色の細粒砂混じるシルトを2層確認しました。これらは、堆積過程において下位層を撹拌しながら堆積したことが分かります。その成因は、人による生産活動としての耕作が考えられます。この耕作土から古墳時代初頭(約1800年前)の土器が出土しました。

以上の地層や出土遺物の観察から、調査地周辺では弥生時代から古墳時代にかけて湖沼からしだいに離水して地表面が現れるものの、時に洪水で水没する環境を経て、古墳時代初頭には耕作地(水田)として人間活動が開始されるようになったという環境変化、また土地利用の具体的な変遷を想像することができます。
この仮説を証明するために、土壌サンプルを採取しました。
発掘調査現場では、自然科学と歴史学を総動員して調査が行われています。

和歌山の文化財情報シリーズ㊷早いもので11月も後半に入り、北風が厳しく、夕方は時雨れる季節になりました。さて、今日は9月に和歌山城ホールで開催した「ここみて!天守閣学芸員の和歌山城写真展」の関連イベント「学芸員のお仕事体験」の様子をお伝えし...
20/11/2025

和歌山の文化財情報シリーズ㊷

早いもので11月も後半に入り、北風が厳しく、夕方は時雨れる季節になりました。

さて、今日は9月に和歌山城ホールで開催した「ここみて!天守閣学芸員の和歌山城写真展」の関連イベント「学芸員のお仕事体験」の様子をお伝えします。

ひとことに「学芸員」と言っても、美術・工芸・文献史学・自然科学・考古学など専門とする分野によってその仕事の内容も異なります。当埋蔵文化財センターで勤務する学芸員は、考古学を専門とする学芸員です。

今回のお仕事体験イベントでは、埋蔵文化財の記録を作成するという仕事のなかでも、出土遺物の記録作成でよく使う拓本の技術を体験していただきました。
拓本作業は、実際に和歌山城から出土した瓦の文様に画仙紙を湿らせて貼り付け、乾いたら墨をつけ文様の凹凸を写しとるまでの一連の作業を体験していただきました。

今回の体験イベントは、小学生を対象として、その親子にご参加いただきました。身近な文化財に触れることで、地域の歴史に興味と愛着をもっていただくことを目的に開催しました。

ただそんな当方の思惑は置いといて、皆さん、手順を覚えると、気になる文様を次から次へとチャレンジする方、またひとつの文様に時間をかけ丁寧に墨つけする方など、白い紙に黒の文様が浮き上がる面白さを皆さんなりに楽しんでいらっしゃるようでした。

もうひとつ、水で湿らせた画仙紙が墨つけできるように乾くまでの待ち時間に、退屈せず楽しんでいただくために用意した考古学者パズル。これが大人気!当埋蔵文化財センター職員が100円均一で難易度別のパズルを仕入れ、土器や遺跡、和歌山城の写真を貼り付けて作ったお手製パズル。
あまりの出来の良さから販売しては?との声も!

またどこかでイベントを開催する時には、必ずパズルを持参しますので是非挑戦してみてくださいね。

住所

和歌山県和歌山市一番丁3 わかやま歴史館3階
Wakayama-shi, Wakayama
640-8146

営業時間

月曜日 08:30 - 17:15
火曜日 08:30 - 17:15
水曜日 08:30 - 17:15
木曜日 08:30 - 17:15
金曜日 08:30 - 17:15

電話番号

+81734351129

ウェブサイト

http://www.wakayama-city-museum.jp/

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