04/06/2026
京都文化博物館フィルムシアター、銀幕推し活/アイドル映画特集。4日と7日は『マダムと女房』(1931)。「フィルムが物を云ふ、恐ろしき科學の力」わが国トーキー映画の先魁作品。伏見晁をギャグアドバイザーとして加えたスマートなシナリオに、新鋭五所平之助を監督に抜擢。軽いユーモアをたたえた蒲田撮影所得意の小市民喜劇に仕上げられた本作は好感をもって迎えられる。弁士の声にかわって、初々しい田中絹代の発する「ねえ、あなた」の声が当時の男性映画ファンにはこたえられず、流行語にもなったという。 https://www.bunpaku.or.jp/exhi_film/schedule/
『マダムと女房』
1931(昭和6)年松竹蒲田作品/57分・モノクロ
原作・脚色:北村小松 ギャグマン:伏見晁 監督:五所平之助 助監督:富岡敦雄、蛭川伊勢夫 撮影:水谷至宏 撮影助手:星野斉、山田吉男 音響記録:土橋武夫、土橋晴夫 美術意匠:脇田世根一 舞台装置:西玄三、滝沢藤三郎 音響助手:松本辰吉、吉田百人 主題歌作詞:サトウ・ハチロー 主題歌作曲:高階哲夫(「スピード時代」)、島田晴誉(「スピード・ホイ」)
出演:渡辺篤(芝野新作)、田中絹代(その女房)、市村美津子(娘テル子)、伊達里子(隣のマダム)、横尾泥海男(画家)、吉谷久雄(新作の友人)、月田一郎(同)、日守新一(見知らぬ男)、小林十九二(音楽家)、関時男(同)、坂本武(運転手)、井上雪子(隣の少女)
劇作家、芝野新作はモダンな文化住宅に引っ越してきた。芝居の脚本も締め切り間近だというのに、彼の周りは何かと騒々しい。やっとのことで机に向かうと、今度は隣の家からけたたましい音楽が。堪忍袋の緒が切れ、隣家に怒鳴り込む新作。そんな彼を迎えたのは、美しいマダムと楽しげなジャズ演奏だった・・・。
「フィルムが物を云ふ、恐ろしき科學の力」、大正14年、米国製の“発声活動写真”が東京新橋演舞場で初公開されて以来、日本でも発声(トーキー)映画の研究が始まった。先駆けとなったのが皆川芳造で、彼は音声を直接フィルムに記録するミナトーキー方式で、『黎明』(昭和2年、昭和キネマ)、『ふるさと』(昭和5年、日活)等の作品を製作するが、未だ試作的印象を免れなかった。昭和4年、独ウーファが本格的にトーキー化、また、フォックス、ワーナー等米大手は全作トーキー化を宣言、日本の洋画系封切館でもトーキー設備の導入が始まった。その設備に惹かれたのが大阪松竹座の楽士であった土橋武夫である。彼は弟・晴夫とともに私財をなげうってトーキーを研究、昭和5年には松竹撮影所長・城戸四郎に認められ、松竹トーキー第一作の準備が始まった。北村小松のスマートなシナリオに伏見晁をギャグアドバイザーとして加え、監督には新鋭五所平之助が抜擢された。軽いユーモアをたたえた蒲田得意の小市民喜劇に仕上げられた本作は好感をもって迎えられる。弁士の声にかわって、初々しい田中絹代の発する「ねえ、あなた」の声が当時の男性映画ファンにはこたえられず、流行語にもなったという。本作を境に日本のトーキーはその試作期を脱した。(キネマ旬報賞第1位)