26/05/2026
【作品紹介】
4月1日より開催中の企画展「香る景色と見えない世界」も会期が載すところわずかとなってきました。
お見逃しなきよう、ぜひご来場ください。
展示中の作品から作品をご紹介していきます。
《僧と草な父》 2026 年 ニヤトー無垢材、黒衣、作業着、映像(10 分04 秒) H1600×W1200×D400 mm
令和の大仏が鎮座する山口は洞春寺に滞在していた若い修行僧に声をかけた。このプロジェクトにおいて最後の" 対象者" であったため、もはや外での肉親の匂い探索というより、肉親( 父)の香りとは?を探るインタビューに終始した。彼の父もまた僧侶であり、嬉野市のお寺で日々お勤めをこなしておられる。彼の父を嗅覚の解像度で模した造形は、いわゆるハンガーラックのようなものだ。父の匂いを訊ねた際に、まず作業着の匂いがあがった。草木の匂いをふんだんに孕んだ作業着は父の代表的な香りだとインタビュー序盤で答えた事に小さな違和感を覚えた。しかし、私が以前、大仏造立プロジェクトで日本中のお寺を訊ね、住職たちからお話を聞いてきた中で、僧侶は僧衣のみで賄える単純な職ではないことも理解していたので、違和感は持ちつつ、すんなりとイメージすることはできた。それは単に、時代や社会の在り方に沿った" 日常のお寺" という言い方でも通じるかも知れない。多分、私の感じた違和感の正体は、出順であり、草木の匂いが先に来るあたり、彼に映る父はまだ師匠的な存在として置ききれない、ただの父という側面が幅を効かせているのやもと感じた。後半に、しっかりと黒衣に言及し、徒弟の顔を覗かせてはくれたが。今作は、私が日本の僧侶たちに感じた地域で生きる為に工夫を重ねている多重性と、対象者の最もな違和感を、2 つの衣類を重ねた荷重のかかりと枠内のバランスで表現した。今の彼が私に紹介する父は、そのような父であった。(前田真治)